てんてこオタク育児記録

育児が楽しすぎるのでちゃんと記録を後世に残せるようにブログにしようと思いました。オタクの育児は変なこだわりが入るのでなにかと記録しておくと良いことがありそうです。※育児の何が正しいかは子によってそれぞれなので内容の是非はご理解くださいませ。

『キャバ嬢の社会学』を読んで、アイドルとファンの関係性に思いを馳せる

北条かや『キャバ嬢の社会学』読了しますた。

 

キャバ嬢の社会学 (星海社新書)
北条 かや
講談社
売り上げランキング: 1,867


同志社大学から京都大学大学院というキャリアをもつ氏の、研究の為にキャバ嬢へ入店し行ったフィールドワークの記録と考察。基本的にはこれに伴い作成した論文をベースに(おそらく)カジュアルに新書化したもの。ちょっとどこかの記事で見かけて興味を持ったので買ってみて、一気に読み切ってみた。本としてはとても読みやすかった。

最初読み始めたときは、これは学術的論文をベースにした新書と言うよりは、フェミニズム特有の偏見にあふれた女学生が、自らに内在する偏見に、キャバクラでの労働を通じて気づいて行くドキュメンタリーのような新書であるように感じた。

しかしそれ以上に、この本は、現代のアイドルとファンとの関係を紐解くのに重要な情報が詰まっているような気がする。キャバ嬢のインタビューからかいま見れる言葉の端々に、最近アイドル業界にファンとしてつっこんでる自分の経験と重なるような部分を多く感じたから。端的に感じたことを表現すると、高次のキャバ嬢と指名客の関係はアイドルとほぼ同じであり、低次のアイドルとファンの関係はキャバクラとほぼ同じである、ということ。

キャバ嬢と指名客の一つの理想的な形を本書では「応援型」もしくは「上司と部下」という関係としている。これはまさに現代のアイドルとファンの関係であり、しかし、アイドル業界の中でもタブーとされるもしくは「低俗」「荒らし」のような評価をファンの間でもされるような、アイドルに肉体関係ーーつまり、金銭的な提供と同等もしくはそれ以上の見返り、を求めるような姿勢は、キャバクラでの理想的でない関係、またはすぐに「(関係が)切れてしまう」状態として言える。

その他にもキャバ嬢や店長から発せられる言葉にはなにか「アイドル感」を感じるフレーズ、アイドルファンからするとドキリとする表現がが多かった。「お客さんをちゃんと人として見ることと「お客さん」としてみることの両立」「友達営業」「普通の女の子らしさ」「「素」を出す」など。

本書では明確には触れられていなかったけれども、後半キャバ嬢の「病み」について語られている章からはキャバ嬢と指名客のある種の「共犯関係」みたいなものが、非常にギリギリなバランスで成り立っていることを感じさせる記録も有り、これもアイドルとファンとの関係に置き換えられることはアイドルファンには理解出来るところじゃないかなあと思う。つまりは、嘘を演じる罪と嘘を受け入れる罪のめちゃめちゃ蜜月な関係というか。そんな共犯と、「ひょっとしら」「万が一」「あわよくば」みたいな素人さがミックスされる世界。でもそこから何かポジティブなものに転化するからその関係が継続する。

で結局僕は、キャバクラとアイドルは一緒だよねっていうのが言いたいのではなくて、そういった汎用性のあるメカニズムに、僕はいつでも巻き込まれていて、そこから抜け出すことは出来ないのか、という自問自答がこの書を読んで起こったということが言いたかったのです。

この書は、ファン(お客さん)にとってアイドル(キャバ嬢)とどのように接するのがお互いのベストになるのか、もしくは一対一の関係に見えながらも実はN対Nであるその仕組みを俯瞰したときにどういった景色が見えるのか、ということを理解するのに必読なのではないかなと思えた。